
人知れず
人知れず
ある花は人知れずひっそりと咲き散るという
ある生まれは
そこに生まれ鼓動し人知れず人知れず
やがて僕らの恥知らずの足がその骨に苔を見るという
人知れず
人知れず

それってなんて素晴らしいことだろう
それってなんて
慎ましやかことだろう

地球はこんなにでっかいのに
宇宙は果てしなく銀河が折り重なっているというのに
僕らの細胞は星一つにも届きやしない

人知れず、人知れず
いま、木のコブをカブトムシがまたいでいる
滴のたまった青々とした草先にテントウムシがむかっている
その弾けた滴にヒヨが低空飛行
ひゅーーっとね、
獲物を狙った忍耐の結果なのか
それとも単に滴で喉を潤したかったのか
僕にはあれこれ想像を膨らますことしかできないけれど
いつだって僕は泣き笑い
人知れず
人知れず
そしてもっともっと…
人知れず
人知れず

タンゴが逝きました。
8月の20日のことです。
午前3時前、
目を見ながら、
涙を流しながら、
逝きました。

火葬は8月23日に済ませました。
台風のあった翌日の、よく晴れた青空の下でした。

一年に、あと少し届かなかったけれど...
24時間聞こえていた君の声が
もう今はありません。
残暑の厳しい中、
なんだかそれは僕を置いてゆくようで......
何もかもが寂しく苦しいです。
蝉たちの鳴き声が心をえぐるようで...............

この一年余り...
ほぼ引き篭もり状態で接してきました。
ワンズの散歩を家族に任せ、
ほんとに、一切外へ出る時間も気力もなく。
外へ出たのは、
ノエルを荼毘に付す時だけだったように、思います。

そんな僕の我が儘で...
いや、
我が儘が、
少しだけでもタンゴの傷を緩和できていたのなら、うれしい。

ひっそりと、
小石のような営みだけれど
そこでも確かに命が踏ん張っている。

ミャーとは鳴かず
あーあ、と言うタンゴ
食事の時だけ
うまいねーと言い、
うまいね、うまいねと繰り返すタンゴ
食べ終わりに差し掛かると...
ないー!と訴えるタンゴ
ノエルが逝きそうなとき、
のえるーと語ったタンゴ
もう、聞こえない

なにも返せていない...
なにも償えていない
あーーーあ、

のれそれと 透き通る青に雲をおう
のれそれと 深遠の海に母をみる
君はあいだにむしばまれ
たった今の命を散らしてゆく
僕もゆくからさと言うころにゃ
空にも海にも居場所などない

お花を送って頂いた思い...
助けて頂いた思い...
こちらで火葬を、と心を砕いていただいた思い...
初七日を無事に迎えることができました。

この傷と、この罪を受け止め
我が儘放題の引き篭もりを、そろそろ変えようと思います。
森はどうなっているのかな
いや、その前に青い空や満天の星たちや月を...。
タンゴ...
タンゴ。


ゆらゆら僕が昇ってゆく
いかにも夏って青空に
なんとも逞しい白雲に
僕はこの世をゆらゆら霞め
家族と目と目を結びながら
あーあ、と鳴いてみる
うまいね、うまいね、と…言ってみる
ここんちの家族となり
騒がしい毎日だったけれど
いつも見つめ合っていた
いつも触れ合っていた
わんこにわんこ、にゃんこに、またにゃんこに
どんだけいるんじゃい!の毎日だったけれど
何より愛してると言ってくれた
だから僕も言葉を返し
答えをもらってまた返した
最後に僕は泣いてしまったけれど
それを家族は心配しているけれど
ほら、
野良たちが集まってきたよ
蝉たちが思い思いだよ
今日は良い空です
僕はゆらゆら昇ってゆくよ
いかにも夏って青空に
なんとも逞しい白雲に
僕はこの世をゆらゆら霞め
家族と目と目を結びながら
あーあ、と鳴いてみる
うまいね、うまいね、と…言ってみる
そして最後に
愛しているよ、と言ってみる
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